エルナー株式会社

電気二重層コンデンサの放電時間

計算方法

放電時間の計算方法

コンデンサの放電時間は以下の式から算出できます。

  1. 定電流放電の場合

    t = {C × (V0 - V1)} / I

  2. 出力より算出する場合

    t = 0.5 × C × (V02 - V12) / P

  3. 定抵抗(負荷)放電の場合

    t = -C × R × ln (V1 / V0)

  4. 公称電池容量に換算する場合

    Ah = 0.5 × C × V02 / (3600 × Vb)

t 放電時間 (sec.)
C コンデンサ容量 (F)
V0 充電電圧 (V)
V1 放電後電圧 (V)
Vb 公称電池電圧 (V)
I 放電電流 (A)
R 放電抵抗(負荷)(Ω)
P 出力 (W)

必要容量の計算方法

コンデンサの必要容量は上記の式を展開して以下の式から算出できます。

  1. 定電流放電の場合

    C = I × t / (V0 - V1)

  2. 出力より算出する場合

    C = 2 × P × t / (V02 - V12)

  3. 定抵抗(負荷)放電の場合

    C = -t / {R × ln (V1 / V0)}

大電流放電の場合、コンデンサの内部抵抗(直流抵抗)と放電電流の積により、放電初期に発生するIRドロップを考慮する必要があります。
微少電流放電の場合、コンデンサの漏れ電流(自己放電)を考慮する必要があります。

計算例

定電流放電の場合の計算例

RAMやRTC等の動作バックアップは、定電流が一般的です。

例として、DBシリーズ5.5V 1Fを5Vで充電し1mAで3Vまで定電流で動作(放電)した場合の放電時間を計算します。

充電電圧V0は5.0V、放電後電圧V1は3.0Vになります。また、放電電流 I は1mAですから、0.001Aとなります。

前述の①式から、放電時間 t = {C × (V0 - V1)} / I = {1F × (5.0V - 3.0V)} / 0.001A = 2000秒となり約33分はバックアップができることが概算できます。

次の例として、動作電圧範囲2.0Vから1.0Vで消費電流10µAで動作するRTCを使用して1時間のメモリーバックを行いたい場合の必要容量を計算します。

前述の①式を展開すると容量の算出はC = I × t / (V0 - V1)となり、要求条件から計算すると、

C = (10 × 10-6A) × 3600s / (2.0V - 1.0V) = 0.036F となります。

従って、当社DSKシリーズ 3.3V0.2 F(サイズφ6.8x1.4mm)を選択すれば動作が可能です。

ここで、注意が必要なのは特に微電流の場合、自己放電による電圧降下分も考慮する必要が在りますので、実際のRTCとキャパシターで動作時間のご確認をお願いいたします。

定電力放電の場合の計算例

モータを動かす場合や、DC-DCコンバーターで出力電圧を一定にして、LEDを点灯させるような場合は定電力での放電が一般的です。

例としてDZシリーズ2.5V 100Fを使用して5V 10mAのLEDを連続点灯するために、DC-DCコンバータで2.5Vから1.0Vまでの範囲で5Vに昇圧する場合の動作時間を計算します。

LEDに必要な電力は5V × 10mA = 0.05Wとなります。

②式より t = 0.5 × C × (V02 - V12) / P = 0.5 × 100F × (2.5V2 - 1.0V2) / 0.05W = 5250秒 となり約87分連続点等させることができます。実際にはDC-DCコンバーターの変換効率も計算する必要がありますので、効率80%として計算すると、70分となります。

ここで、1秒間に20mSec.だけ点灯する点滅動作の場合は、電力の消費はこの点灯時間だけになりますから、この50倍の3500分(約58時間)動作することが見込めます。

次の例として1Wの負荷を2.5Vから1Vの範囲で、10分動作させるのに必要な容量を計算します。

②式を展開すると、C = 2 × P × t / (V02 - V12)となり、要求条件から計算すると、

C = 2 × 1W × 600s / (2.5V2 - 1.0V2) = 228F となります。

従って、当社DZHシリーズ2.5V300F(サイズ φ35 × 50mm)を選択すれば13分ほどの動作が可能になります。

注意事項

実際の放電時間と計算の時間に差異がある場合は下記を確認ください。

注意事項

放電電流が大きい場合、直流内部抵抗と電流の積によるIRドロップが発生します。

短時間の場合IRドロップはΔV1と見ることができるが、JIS規格では直流抵抗は ΔV2/Iから求めることと規定しています。

Rd = ΔV2 / I

ここに、

  • Rd:直流内部抵抗(Ω)
  • ΔV2:降下電圧(V)
  • I:放電電流(A)

自己放電の影響

電気二重層コンデンサには微小電流の自己放電があります。

従って、蓄電後に小電力で長時間使用する場合は、自己放電を考慮して放電時間を求める必要があります。

計算上の放電カーブに対し、電圧保持特性試験から得た自己放電分の電圧降下を加えることにより実際の放電カーブに、より近い値となります。

なお、自己放電の値は充電時間や周囲温度により差が出ます。