コンデンサの原理は図1のような原理図で表すことができます。
誘電体の両面に金属電極を対応させ、この電極間に電圧を印可すると電圧に比例して電荷が蓄えられます。
Cをコンデンサの静電容量と呼び、静電容量は電極面積(S)、電極間距(t)、誘電体の比誘電率(ξ)により次式で表されます。
より大きな静電容量を得るためには、比誘電率が大きいこと、電極面積Sを大きくすること、tを小さくすることが条件となります。アルミニウム酸化皮膜の比誘電率は7~8です。表1にコンデンサによく用いられる誘電体の比誘電率を示します。
誘電体 | 比誘電率 | 誘電体 | 比誘電率 |
---|---|---|---|
アルミニウム酸化皮膜 | 7~8 | 磁器(セラミック) | 10~120 |
マイラー | 3.2 | ポリエチレン | 2.5 |
マイカ | 6~8 | タンタル酸化皮膜 | 10~20 |
さらに、導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサの場合は,アルミニウム箔表面を祖面化することによって数倍から120倍程度に実効面積を拡大することができるので、他のコンデンサに比べ容量値がはるかに大きくなります。
なお、コンデンサの名前は主に誘電体の材料によって決められる場合が多く、例えばアルミニウム電解コンデンサ、タンタルコンデンサ等です。
導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサは、高純度アルミニウム箔表面に酸化皮膜を誘電体として形成したものを陽極とし、電解質(導電性高分子+電解液)を含んだ電解紙、陰極引き出し用のアルミニウム電極箔から構成されています。
図2の陽極酸化皮膜の厚みが、「コンデンサの原理」頁の電極間距離(t)となります。導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサは耐電圧に応じてこの陽極酸化皮膜の厚みを変えておりtの値を非常に小さくすることが可能となっており、更に粗面化による電極面積(S)の拡大、誘電率(ξ)が大きいことがあいまって、小形ながら大きな静電容量が得られています。
陽極原箔には通常厚み50~100μm純度99.99%以上の高純度アルミニウム箔を使用します。
また、陰極原箔には厚み15~60μm純度99%以上のアルミニウム箔を使用します。コンデンサの静電容量はその電極面積に比例するため、誘電体皮膜を生成する前に、アルミニウム箔の表面を粗面化し、実効面積を拡大します。通称これをエッチングと呼んでおります。
エッチングは一般的に塩酸液に浸漬(化学エッチング)したり、塩酸水溶液中でアルミニウムを陽極として電解(電気化学的エッチング)する方法が用いられます。電気化学的エッチングでは電解の電流波形、液の組成、温度等によりエッチング形状が異なり、コンデンサの性能に合わせたエッチングの方法が選ばれます。エッチングの倍率(平滑箔面積に対する祖面化された箔実効面積の比率)は一般に数倍から120倍程度にできます。エッチングされた箔の表面は塩素イオンが残ると、箔が腐触されたりしてコンデンサの劣化現象をまねく為、充分洗浄処理を行います。エッチング箔の形状は大きく分けて使用する電圧によって下記の2種類に分けられます。拡大写真1を参照下さい。
低圧用箔 | 高圧用箔 | ||
---|---|---|---|
表面(倍率:3500倍) | 断面(倍率:350倍) | 表面(倍率:3500倍) | 断面(倍率:350倍) |
化成用の電解液中において陽極酸化することによって、アルミニウム表面に電気絶縁性(耐電圧)のある酸化物を形成することを「化成」といいます。
生じた化成皮膜を陽極酸化皮膜としています。
陽極酸化は、図3に示すように、化成用の電解液中で電圧を印加することによって生成します。
化成用の電解液は、硼酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム等の水溶液が一般に用いられます。
陽極酸化(直流電解)を行うとから生じた
イオンと水との反応によってが生成します。
この化成皮膜の厚みは、印加する面圧にほぼ比例し、1V当り1.0~1.4nm成長します。陽極側、陰極側での化学反応は下記で表せます。
陽極酸化を行い生成した酸化皮膜の拡大写真を写真2、写真3に示します。参照下さい。
導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサは、陽極箔と陰極箔を対向させ、電解紙をはさみ込んで巻回した構造をしておりますが、真に祖面化されている陽極箔面に対極を設けることは非常に困難であり、電解質(導電性高分子+電解液)を含浸させることで対極の役目も持っています。この様に電解質(導電性高分子+電解液)は、実質上の陰極として機能しています。電解質(導電性高分子+電解液)に求められる基本的な性能を上げると次の様になります。